忠臣蔵討入・る祭(忠る)の感想(4)
忠るの感想、その4。 最後の項目。長かった・・・。
今までの。
q692te.hateblo.jp
んー。
ここはネガティブな項目なので、ポジティブな話しか目に入れたくない方は飛ばしてください。役者個人への思いではなく、脚本・構成に対する印象です。足りないなと思ったところ。ディスではないと思う。たぶん。
んー、の中身をみる:クリックすると開く
今回は個人的には体感的に軽くて、人数も少ないし時間も短いし精神的にも身体的にも楽だなと思いました。疲れない、ただ楽しいと思えるお祭り。全力で楽しめました。めっちゃ楽しかったよ!!!!全通して本当によかった。そして祭シリーズ10周年として、大江戸鍋でもやった忠臣蔵として、正しいと思っています。
反面、深い内容はないなとも思いました。
スーパー演出と役者陣の演技に騙されてない?大丈夫?という気分に。散々書き連ねてはいますが、今までの内容は構成や役者陣に対するツッコミであり、内容の深堀りは特にないかなぁ、なんて。
正直大石も家宣も、話す内容が軽い。特に家宣。重かったのは敵方でしたね。「現代版」を作る≒「視座の違い」を意識させる演目だったので、吉良や綱吉の背景のほうが分かりやすく作られていたので、観客にとっては敵方の情報のほうが親切であり丁寧だと感じてしまいました。
家宣は背景というよりも彼の追い求める理想が、自分が大切な人を殺めた上ではあるとはいえ、「身分の上下に関わらず、すべての者が笑って暮らせる世の中」「私は私が理想とする、みんなが笑って暮らせる国作りを目指したい」という言っちゃあ悪いですが薄っぺらい理想です。小学生が考えた最強の総理大臣みたいなセリフだなぁって思ってしまう。
もちろん理想はそうであっても現実はそうとはいかない。彼は小学生ではなく「当事者」です。ただ、彼の政治的な理想はこれ以外に出てこないんですね。
むしろ、大切な人を殺し一度自分の居場所を失ったのだから、もう一歩が欲しかった。こういった甘い理想を36歳の俳優にいわせるのかぁという気持ちにもなりました。る戦の時の佐奈くんのような若い役者であれば違和感もそこまで出なかったんですけれどもね。(そりゃあ年齢を下げるような演技をしますよね。バブくもなりますわなぁ……。)
もちろん、人を殺めた上でこういった理想を掲げるのが家宣らしさであり、それが彼の強さであるという解釈するのもなくはないかと思うんですが、個人的にはそうは思えませんでしたね……。
それと、綱吉のしたことは許される話でもありません。信子も毒殺を重ねているようですし。でもそれは家宣自身だってそう。仲間を殺して見限られているわけです。ほんと記憶喪失ですべてがリセットされた気分になりやがってコイツは・・・。それどころか赤穂藩士たちの矜持を踏みにじるな甘ちゃんが。と思ってしまいまして。
赤穂藩士は自ら「赤穂浪士」と刻んだダンダラ袴を羽織っており、そこに彼らの崇高な魂を感じます。もちろん、「死に行く」ことを美しく描くのは現代の価値観からズレているのでしょうが、「赤穂浪士」を背負う勇気も覚悟もない家宣が泉岳寺に行くことは許されないと思うんですね。泉岳寺行きを乞うのはいささか甘ちゃんがすぎるのですよ。もちろん、最後ちゃんと「寺坂」とは別れを告げるのですが。
脚本の内容的な問題ではありますが、熟成された中堅の役者に濃度の薄いことを言わせているなという印象が最後まで拭えなかったという印象がありました。
・・・・本当、年齢を下げた演技をせざるをえなかったと思うんですよね。
ーー
大石はというと、こっちもね。コバカツさんの演技の巧さと色気に脳死してる気がしちゃう。
大石言ってること、とっ散らかってません?「転職したい」という現代版設定の功罪があるような、ないような……。大石から殿への愛、藩への愛、藩士への愛はわかるけど、「あれでもこの人辞めたかったじゃん。」と思うんですよ。
私自身が、転職するする詐欺のパワハラ上司複数名に巡り合いその度に苛立っていたからかもしれませんが。「転職したい上司」なんぞについていくの嫌ですね、私だったら……。
赤穂藩士たちが素直で良い子達でよかったですね。。もうちょっと赤穂藩士がなぜ彼を最期まで慕い続けるのかの理由もほしいところでしたが。。(リーディングで補完なのか?)大石は辞表を出して何をやりたかったんですかねえ。彼自身がどうしたいのか、彼のビジョンはよく見えませんでした。ニート?(頼朝様か?)
そんな大石と喜世のシーン。いいシーンなんです、わかります。グッときた回ももちろんあります。「喜世、(ぽんぽん)」とか惚れちゃうじゃん。わかるわ。
ただ、回を追えば追うほどセリフの継ぎ接ぎが気になって仕方ありませんでした。特に楽日にアレレ?と私はなってしまったんですよね。なんか毎回「お、エチュード初めた?」という気分になっちゃう。
少なくとも私と妹(席はバラバラ)は同じ感想を持ちました。みんな好きなシーンなんだろうなってわかるんですけど……私は気になっちゃったんです。
念押ししますが、個人の感想だよ。
ーー
■31日夜
殿は元気かなぁ
もう一回だけ もう一回だけでも会いたいなあ
私はなあ 殿をずっと小さいときから観てきた
私は あの方自身の人柄が好きだったんだろうな
(以降共通セリフ)
いやでも、これは私にとって仕事だ。
私にとっての仕事と言うのは金よりもまず義が立つ
ーー
「あの方自身の人柄が好きだったんだろうな」というのがあまりに唐突すぎるんですね。これ違う回では「先代の殿から息子をよろしく頼むと言われた。でもそんなことは関係ない。私はあの方自身の人柄が好きだったんだ。」みたいな流れで使用していて、こっちだと全く違和感がない。
人柄じゃなくて、「殿が大好きだったんだ」ver.にすれば違和感なかった気がしますが・・・。全公演見ている弊害かもしれないなと思いつつも、違和感だと感じてしまったものはしょうがないなとも思っています。
殿が好き?仕事?金?義?パラパラとセリフがつぎはぎ組み合わされたような印象でした。いや、何度も見て逆に混乱する舞台なんてある?逆じゃない?
そもそも大石がそんなに殿が好きだというようには見えていないんですよね。
1幕終わりの「殿!」と叫ぶシーンとここでしか見えない部分。確かにキャラクターの設定上、大石は「見せない人」なんですが、「見えなすぎた」という気もするんです。「転職したい」という設定がなぁ・・・。
別の項目にも書いたけれど、"世の中金が動かしている"、"規則規則で縛り付ける"、のセリフも効果がいまいちわからないんだけれども、、、
改めて考えてみてもなんかコバカツさんのかっこよさと色気と演技の巧さにやられて脳死してる気がしちゃうんだよな。コバカツさんはズルい男なので・・・。
--- この項目棘あるからサイレントで追記するね。(21/1/20)
もちろん座長二人は巧いので、家宣・寺坂・大石を想像させる余地が広がる芝居しているのですよ。
ただ、本がその想像を狭めている、というだけの話。なんらかの補助線が引けると世界は広がっただろうに、という物足りなさ。
それをリーディングで補完するというのは、本来はすべきではないし(物語は舞台の上で完結すべき)あまりにも惜しいということなんですよ。
その後の世界を想像するのは観客の自由だけれど、見えずに閉じた物語が多い。
リーディングでのさらなる拡張は大いに歓迎なんだけれど、本来描くべき世界が狭いのはうーんって思ってしまうところで忠るは正直そのあたりは足りないと個人的に思っています。
個人的にはやっぱり、大石、赤穂藩、足りないと思うんだよ。1幕にもう少しだけ仕掛けが必要だったと思う。
—-
反面、深い内容はないなとも思いました。
スーパー演出と役者陣の演技に騙されてない?大丈夫?という気分に。散々書き連ねてはいますが、今までの内容は構成や役者陣に対するツッコミであり、内容の深堀りは特にないかなぁ、なんて。
正直大石も家宣も、話す内容が軽い。特に家宣。重かったのは敵方でしたね。「現代版」を作る≒「視座の違い」を意識させる演目だったので、吉良や綱吉の背景のほうが分かりやすく作られていたので、観客にとっては敵方の情報のほうが親切であり丁寧だと感じてしまいました。
家宣は背景というよりも彼の追い求める理想が、自分が大切な人を殺めた上ではあるとはいえ、「身分の上下に関わらず、すべての者が笑って暮らせる世の中」「私は私が理想とする、みんなが笑って暮らせる国作りを目指したい」という言っちゃあ悪いですが薄っぺらい理想です。小学生が考えた最強の総理大臣みたいなセリフだなぁって思ってしまう。
もちろん理想はそうであっても現実はそうとはいかない。彼は小学生ではなく「当事者」です。ただ、彼の政治的な理想はこれ以外に出てこないんですね。
むしろ、大切な人を殺し一度自分の居場所を失ったのだから、もう一歩が欲しかった。こういった甘い理想を36歳の俳優にいわせるのかぁという気持ちにもなりました。る戦の時の佐奈くんのような若い役者であれば違和感もそこまで出なかったんですけれどもね。(そりゃあ年齢を下げるような演技をしますよね。バブくもなりますわなぁ……。)
もちろん、人を殺めた上でこういった理想を掲げるのが家宣らしさであり、それが彼の強さであるという解釈するのもなくはないかと思うんですが、個人的にはそうは思えませんでしたね……。
それと、綱吉のしたことは許される話でもありません。信子も毒殺を重ねているようですし。でもそれは家宣自身だってそう。仲間を殺して見限られているわけです。ほんと記憶喪失ですべてがリセットされた気分になりやがってコイツは・・・。それどころか赤穂藩士たちの矜持を踏みにじるな甘ちゃんが。と思ってしまいまして。
赤穂藩士は自ら「赤穂浪士」と刻んだダンダラ袴を羽織っており、そこに彼らの崇高な魂を感じます。もちろん、「死に行く」ことを美しく描くのは現代の価値観からズレているのでしょうが、「赤穂浪士」を背負う勇気も覚悟もない家宣が泉岳寺に行くことは許されないと思うんですね。泉岳寺行きを乞うのはいささか甘ちゃんがすぎるのですよ。もちろん、最後ちゃんと「寺坂」とは別れを告げるのですが。
脚本の内容的な問題ではありますが、熟成された中堅の役者に濃度の薄いことを言わせているなという印象が最後まで拭えなかったという印象がありました。
・・・・本当、年齢を下げた演技をせざるをえなかったと思うんですよね。
ーー
大石はというと、こっちもね。コバカツさんの演技の巧さと色気に脳死してる気がしちゃう。
大石言ってること、とっ散らかってません?「転職したい」という現代版設定の功罪があるような、ないような……。大石から殿への愛、藩への愛、藩士への愛はわかるけど、「あれでもこの人辞めたかったじゃん。」と思うんですよ。
私自身が、転職するする詐欺のパワハラ上司複数名に巡り合いその度に苛立っていたからかもしれませんが。「転職したい上司」なんぞについていくの嫌ですね、私だったら……。
赤穂藩士たちが素直で良い子達でよかったですね。。もうちょっと赤穂藩士がなぜ彼を最期まで慕い続けるのかの理由もほしいところでしたが。。(リーディングで補完なのか?)大石は辞表を出して何をやりたかったんですかねえ。彼自身がどうしたいのか、彼のビジョンはよく見えませんでした。ニート?(頼朝様か?)
そんな大石と喜世のシーン。いいシーンなんです、わかります。グッときた回ももちろんあります。「喜世、(ぽんぽん)」とか惚れちゃうじゃん。わかるわ。
ただ、回を追えば追うほどセリフの継ぎ接ぎが気になって仕方ありませんでした。特に楽日にアレレ?と私はなってしまったんですよね。なんか毎回「お、エチュード初めた?」という気分になっちゃう。
少なくとも私と妹(席はバラバラ)は同じ感想を持ちました。みんな好きなシーンなんだろうなってわかるんですけど……私は気になっちゃったんです。
念押ししますが、個人の感想だよ。
ーー
■31日夜
殿は元気かなぁ
もう一回だけ もう一回だけでも会いたいなあ
私はなあ 殿をずっと小さいときから観てきた
私は あの方自身の人柄が好きだったんだろうな
(以降共通セリフ)
いやでも、これは私にとって仕事だ。
私にとっての仕事と言うのは金よりもまず義が立つ
ーー
「あの方自身の人柄が好きだったんだろうな」というのがあまりに唐突すぎるんですね。これ違う回では「先代の殿から息子をよろしく頼むと言われた。でもそんなことは関係ない。私はあの方自身の人柄が好きだったんだ。」みたいな流れで使用していて、こっちだと全く違和感がない。
人柄じゃなくて、「殿が大好きだったんだ」ver.にすれば違和感なかった気がしますが・・・。全公演見ている弊害かもしれないなと思いつつも、違和感だと感じてしまったものはしょうがないなとも思っています。
殿が好き?仕事?金?義?パラパラとセリフがつぎはぎ組み合わされたような印象でした。いや、何度も見て逆に混乱する舞台なんてある?逆じゃない?
そもそも大石がそんなに殿が好きだというようには見えていないんですよね。
1幕終わりの「殿!」と叫ぶシーンとここでしか見えない部分。確かにキャラクターの設定上、大石は「見せない人」なんですが、「見えなすぎた」という気もするんです。「転職したい」という設定がなぁ・・・。
別の項目にも書いたけれど、"世の中金が動かしている"、"規則規則で縛り付ける"、のセリフも効果がいまいちわからないんだけれども、、、
改めて考えてみてもなんかコバカツさんのかっこよさと色気と演技の巧さにやられて脳死してる気がしちゃうんだよな。コバカツさんはズルい男なので・・・。
--- この項目棘あるからサイレントで追記するね。(21/1/20)
もちろん座長二人は巧いので、家宣・寺坂・大石を想像させる余地が広がる芝居しているのですよ。
ただ、本がその想像を狭めている、というだけの話。なんらかの補助線が引けると世界は広がっただろうに、という物足りなさ。
それをリーディングで補完するというのは、本来はすべきではないし(物語は舞台の上で完結すべき)あまりにも惜しいということなんですよ。
その後の世界を想像するのは観客の自由だけれど、見えずに閉じた物語が多い。
リーディングでのさらなる拡張は大いに歓迎なんだけれど、本来描くべき世界が狭いのはうーんって思ってしまうところで忠るは正直そのあたりは足りないと個人的に思っています。
個人的にはやっぱり、大石、赤穂藩、足りないと思うんだよ。1幕にもう少しだけ仕掛けが必要だったと思う。
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超余談:クリックすると開く
というか演劇人たちは「転職」を何だと思ってるんだろ。
これは常々思っている演劇人からみた「一般会社員のステレオタイプ」を感じるアレですが。「新入社員で転職する人が3〜4割いるらしくて」という話をしていましたが・・・新卒と大石みたいな役職付きの人の転職はえらい違いがあるような気がしてしまいますよね。
立つ鳥跡を濁しまくる転職しようとすな、大石。引き継ぎを丁寧にしろ大石。
またここは超余談段落なので書き留めますが、私は他意なく、31日夜の「殿は元気かなぁ」は劇中の殿だと思ってます。受け止め方は自由だとは思いますが。今この時を愛しているので、できれば役者にもそうであってほしいと願っています。ここに見えない方への愛は、今回の忠る公演では違う形で贈られているのではないかなと私は解釈したいです。
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これは常々思っている演劇人からみた「一般会社員のステレオタイプ」を感じるアレですが。「新入社員で転職する人が3〜4割いるらしくて」という話をしていましたが・・・新卒と大石みたいな役職付きの人の転職はえらい違いがあるような気がしてしまいますよね。
立つ鳥跡を濁しまくる転職しようとすな、大石。引き継ぎを丁寧にしろ大石。
またここは超余談段落なので書き留めますが、私は他意なく、31日夜の「殿は元気かなぁ」は劇中の殿だと思ってます。受け止め方は自由だとは思いますが。今この時を愛しているので、できれば役者にもそうであってほしいと願っています。ここに見えない方への愛は、今回の忠る公演では違う形で贈られているのではないかなと私は解釈したいです。
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その他
寺坂:クリックすると開く
というわけで、続けて寺坂のことを。
31日に両座長の口から語られた滝口幸広さん、彼が大江戸鍋の時に演じていたのが寺坂でしたね。「寺坂」を座長にするのは、るひまは10周年に座長に据えたかったのかなあ、なんて思ってしまいました。平野さんが「いろんな想いを背負って」と各所で何回もいうので、、、まあそういうことなんだろうなって思っています。
10周年はるひまの常連組が良きポジションに収まっていたので、彼も常連組の1人として良きポジションにいたんだろうなと。この10年を盛り上げた俳優陣への愛を感じました。
このご時世で全公演できたのは寺坂パワーもあったかもしれないですね。今年も晴れたなあ。1日だけ雨の日があったけど、結局ほぼ降らず傘を刺さずに過ごせたなあ。
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31日に両座長の口から語られた滝口幸広さん、彼が大江戸鍋の時に演じていたのが寺坂でしたね。「寺坂」を座長にするのは、るひまは10周年に座長に据えたかったのかなあ、なんて思ってしまいました。平野さんが「いろんな想いを背負って」と各所で何回もいうので、、、まあそういうことなんだろうなって思っています。
10周年はるひまの常連組が良きポジションに収まっていたので、彼も常連組の1人として良きポジションにいたんだろうなと。この10年を盛り上げた俳優陣への愛を感じました。
このご時世で全公演できたのは寺坂パワーもあったかもしれないですね。今年も晴れたなあ。1日だけ雨の日があったけど、結局ほぼ降らず傘を刺さずに過ごせたなあ。
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メモ
直前の代役でバタバタでしたが、ちゃんと幕が上がったことに感謝です。忠るの初日までの流れは以下より。
https://fusetter.com/tw/323hyKe3
そんなこんなで奇跡のような8公演
千秋楽公演の規制退場の幕の向こうでキャスト陣の盛り上がる声(イエーヤッターおつかれー!的な)が聞こえてきて、それに対して客席から拍手が湧いた光景を忘れません。本当に8公演完走できたのは奇跡のようでした。お疲れさまでした。みんなみんな大好きです。
追加グッズも、上映会も、円盤も、この先の新たな10年も待っています。
おわり〜〜〜!
お疲れさまでした!